【書評】「頭のいい人が話す前に考えていること」──話す前の“思考”を鍛える本
会話術の本は世の中に星の数ほどあるけれど、本書はその中でも少し異色だった。
理由はシンプルで、テクニックではなく“思考法”にフォーカスしているからだ。
私たちはつい「うまく話すコツ」「会話が盛り上がるテクニック」に流れがちだが、本当に大事なのは 話す前に何を考えているか 。本書はその“前提となる思考”を丁寧に整理し、会話の質を根本から変えるアプローチを示してくれる。
■話す前に必要な「客観視」
まず印象に残ったのは、いわゆる「バカな話し方」を排するための視点だ。
根拠が薄い
言葉に鈍感
物事の成り立ちを知らないまま話す
耳が痛いが、たしかにこれらは相手に響かない話の典型。話す前に自分の思考を一度客観視する癖をつけるだけで、言葉の質は一段階上がる。
■理解している=整理できている
本書で特に納得感があったのが「整理の思考法」。
> 理解の深度が深い話は人を惹きつける
これは仕事でも会話でも普遍的な真理だと思う。
そしてその理解の深さは、
結論から話す
事実と意見を分ける
という“整理”ができているかで決まる。
当たり前に見えて、実は一番むずかしい部分かもしれない。
■“聴く側”の姿勢が会話の質を決める
良い会話は話し手だけで成立しない。本書が強調する「傾聴の思考法」は、会話の根幹にあるものだ。
相手の言いたいことを考えながら聞く
肯定も否定もしない
評価しない
意見を安易に言わない
好奇心を総動員する
これらを徹底すると、相手は不思議と「もっと話したくなる」。
“会話が続く人”は、結局この姿勢が徹底しているのだと感じた。
■会話を深める質問の技術質問の章は、すぐ仕事に使える内容だった。
●大質問
過去行動仮定(もし〜だったら?)
●小質問
状況
行動
結果
この2階層の構造は、会話だけでなく、面談、インタビュー、授業など、どの場面でも応用が効く。
「なんとなく質問する」から、「構造的に質問する」へと変わるポイントだ。
■言語化の質がアウトプットを決める
本書の締めくくりは「言語化の思考法」。
再定義(○○ではなく△△だ)
ネーミングにこだわる
“ヤバい・エモい・すごい” を封印する
読書ノートやノウハウメモを作る
言語化を磨くことは、話す力だけでなく、仕事の生産性や文章力にも直結する。
個人的には「再定義」の発想が特に良かった。
物事を別の角度から言い換える癖がつくと、理解も説得力も飛躍的に深まる。
■まとめ:
会話の前提を変える本多くの会話本が「こう話せ」「こう返せ」というテクニックに寄りがちな中で、本書は“話す前の思考”にスポットを当てた稀有な一冊だった。
話す力を伸ばしたい人よりも、話がまとまらない説得力がないと言われる人の話を深く聞けないと悩む人ほど刺さる内容だと思う。
会話の表面ではなく“土台”を整えたい人におすすめしたい。

