【書評】「頭のいい人が話す前に考えていること」──話す前の“思考”を鍛える本
会話術に関する書籍は世の中に数多く存在しますが、本書はその中でも少し異色の一冊です。
その理由はシンプルで、「テクニック」ではなく「思考法」に焦点を当てている点にあります。
私たちはつい、「うまく話すコツ」や「会話が盛り上がるテクニック」に意識が向きがちです。しかし本当に重要なのは、“話す前に何を考えているか”という点ではないでしょうか。本書は、その前提となる思考を丁寧に整理し、会話の質そのものを根本から高めるアプローチを示しています。
話す前に必要な「客観視」
まず印象に残ったのは、いわゆる「拙い話し方」を避けるための視点です。
- 根拠が曖昧であること
- 言葉に対する感度が低いこと
- 物事の成り立ちを理解しないまま話してしまうこと
いずれも耳が痛い指摘ですが、相手に伝わらない話の典型でもあります。話す前に自分の思考を一度客観的に見つめ直すだけで、言葉の質は確実に向上すると感じました。
理解していることは、整理できている
本書の中で特に納得感があったのが、「整理の思考法」についての章です。
理解の深い話は、人を惹きつける
これは仕事においても日常会話においても通じる、普遍的な考え方だと思います。
そして、その理解の深さは、
- 結論から話すこと
- 事実と意見を明確に分けること
といった「整理」ができているかどうかによって決まります。
一見すると当たり前のようでいて、実践するとなると最も難しい部分かもしれません。
「聴く側」の姿勢が会話の質を左右します
良い会話は、話し手だけで成立するものではありません。本書で強調されている「傾聴の思考法」は、会話の土台となる重要な考え方です。
- 相手の意図を考えながら話を聴くこと
- 肯定も否定もしないこと
- 評価を加えないこと
- 意見を急いで述べないこと
- 好奇心をもって向き合うこと
これらを意識して徹底することで、相手は自然と「もっと話したい」と感じるようになります。
「会話が続く人」とは、こうした姿勢を無理なく実践している人なのだと感じました。
会話を深める質問の技術
質問に関する章は、すぐに仕事で活用できる実践的な内容でした。
大質問
- 過去行動仮定(もし〜だったら?)
小質問
- 状況
- 行動
- 結果
この二階層の構造は、会話に限らず、面談・インタビュー・授業など、さまざまな場面で応用できます。
「何となく質問する」状態から、「意図をもって質問する」状態へと意識を切り替えるきっかけになるでしょう。
言語化の質がアウトプットを決めます
本書の締めくくりは、「言語化の思考法」です。
- 再定義(○○ではなく△△である)
- ネーミングにこだわること
- 「ヤバい」「エモい」「すごい」といった抽象語を避けること
- 読書ノートやノウハウメモを作成すること
言語化の力を磨くことは、話す力にとどまらず、仕事の生産性や文章力の向上にも直結します。
中でも「再定義」という考え方は印象的で、物事を別の角度から言い換える習慣が身につくことで、理解の深さや説得力が大きく高まると感じました。
まとめ:会話の前提を整える一冊です
多くの会話本が、「こう話すべき」「こう返すとよい」といったテクニックに重点を置いている中で、本書は「話す前の思考」に光を当てた、非常に貴重な一冊です。
話す力を高めたい人はもちろん、
- 話がうまく整理できないと感じている方
- 説得力に欠けると言われた経験がある方
- 相手の話を深く理解できていないと悩んでいる方
このような方ほど、本書の内容は多くの気づきを与えてくれるはずです。
会話の表面的なテクニックではなく、その土台となる思考を整えたい方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
著者紹介
安達 裕哉(あだち ゆうや)
コンサルティング会社勤務を経て独立し、組織論や仕事術、思考法をテーマに執筆・発信を行っているビジネス作家です。論理と感情の両面から「仕事ができる人の思考」を言語化するスタイルに定評があり、数多くの著書を世に送り出しています。
書籍情報
書名:頭のいい人が話す前に考えていること
著者:安達 裕哉
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https://www.amazon.co.jp/dp/4478117563

