【書評】「好きを言語化する技術」―他人の言葉に飲まれない、自分の“好き”を守るために
自分の「好き」をどう言葉にするか――SNSの時代、誰もが感想を語れ、誰の感想にも影響されてしまうからこそ、このテーマはとても難しい。
でも本書は、そんな悩みにひとつの明確な答えを出してくれる。「自分の感情を核に、工夫で包み、妄想力でひろげていく」。
このプロセスこそが、“自分だけの感想”を生み出す鍵なのだと。本書を読んで印象的だった点を、特に心に刺さった部分を中心にまとめたい。—
■「好きを言葉で保存する」という発想
まず最初に心を掴まれたのが、この一文だ。
> 「好きを言葉で保存する」
写真を撮るように“好き”を言語で残す。
それは、時間が経っても色あせない「自分自身の記録」になる。
ただし、その第一歩で最も大切なのが、
> 他人の感想を見ないこと。
これは強烈。
SNSで検索する癖がついている現代人には、なかなかハードルが高い。でも確かに、他人の言語化に頼ると、すぐに「誰かの言葉の二番煎じ」になってしまう。
自分の好きに自信を持つために、まず自分の言葉を信じる。
本書は、その姿勢を徹底的に教えてくれる。
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■感想を言語化するための3ステップがわかりやすい
本書では「言語化の前にやるべきこと」を具体的な手順で整理している。このプロセスが非常に実践的。
①良かった点を“細かく”挙げる
・嘘はつかない
・良いだけじゃなく違和感も書く
・「言語化とは細分化」
これはかなり目からウロコだった。
感想が抽象的になってしまう理由って、具体例を拾えていないからなんだと気づく。
②感情を言語化する本書では「面白さ=共感+驚き」と定義。
・自分の体験との共通点
・自分の好きなものとの共通点
・どこが新しいか
感想が中身のあるものに変わるのは、この“共感と驚きのバランス”があるから。
③忘れる前に孤独にメモをとる
・自由に書く
・メモ範囲を決める
この「孤独に」という言葉に、本書の思想がぎゅっと詰まっている。
他人の視線がない場所で、自分の言葉だけを拾い上げる。
だから純度が保たれる。
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■推しについて語るときの“情報格差の埋め方”が神
推し語りって、つい熱が入りすぎて相手を置き去りにしがち。でも本書はここを丁寧に解説してくれる。
相手がどれだけ知っているか。どんな印象を持っているか
。どこに興味があるか、ないか。これを理解したうえで、
1. 相手の知らない情報を補足する
2. 興味のある枠に合わせて語る
3. 興味がなさそうなら言及して距離をとるこれ、リアルに使える。
推し語りが“相手との共同作業”になる感覚がすごくいい。
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■推しの素晴らしさを文章にするための設計図が明確
文章を書くときのポイントが非常に実践的。
●まず読者を決める・同じ推し仲間
・中学生のときの自分
・推し本人
・父親
など読者によって語り方が変わるという当たり前だけど忘れがちな視点を、丁寧に思い出させてくれる。
●伝えたいポイントは1つに絞る
> xx(要素)が○○(感情)だったのは、△△(理由)だから。
これだけで文章の軸がブレなくなる。
●書き出しのパターン
・要素の説明
・引用・自分語り
・文脈
・問い
「修正前提でとりあえず書け」という言葉も背中を押してくれる。
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■書けなくなった時の対処法も細かい
・書き出しを疑う
・もう一度推しに触れる
・好きな文章を読み返す
この辺りの“救済措置”が、書く人への優しさに溢れている。
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■書き終えたあとこそ本番
・順番を入れ替える
・良いフレーズは冒頭へ
・不要な文を削る
・見出しをつける
そして最後にくる強い一言。
> 「他人の言葉から自分を守る。そのために自分の言葉を持つ。」
これが本書の核だと感じた。
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■まとめ:自分の「好き」を守るための一冊本書は単なる「感想の書き方マニュアル」ではない。
もっと根本的に、“他人の言語に流されやすい時代に、自分の好きと自分の言葉を取り戻すための本”だと思った。
推し活が好きな人にも、レビューを書く人にも、ブログを書き始めたい人にも刺さる内容。
自分の「好き」に誠実でありたい人におすすめしたい一冊だった。

